相 続 税 と は ?「納 付・延 納・物 納」

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1. 相続税の課税と納税・控除の仕組み

1.相続税の概要

基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の数
未成年者控除 20歳に達するまでの年数×10万円
障害者控除

85歳に達するまでの年数×10万円

(特別障害者の場合は20万円)

小規模宅地等の特例面積 居住用宅地は面積が330㎡まで
相続税の課税と控除の仕組み

※遺産の総額が相続税の基礎控除を超えない場合は、これまでどおり相続税の申告の必要はありません。

2.相続税の税率と控除額

相続税の区分は、従来よりも細分化され、また最高税率も引き上げられました。

相続人各自の取得分 税 率 控 除 額
1,000万円以下 10%
1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超 1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1,700万円
2億円超 3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

3.相続税計算のモデルケース

ここでは、実際の計算を通して相続税がいくら発生するかを検証してみます。

今までの仕組みなら相続税が低額だったであろう被相続人A太郎さんのご家族でみていくことにします。

  • 被相続人:A太郎さん 遺産総額8,000万円
    相続人は妻のB子さんと長男C介さんの2名
    法定相続分での遺産分割とします。

    まずは基礎控除額を引きます。
    基礎控除額4,200万円
    8,000万円 - 4,200万円=3,800万円
    超過した3,800万円を、それぞれが2分の1ずつ取得したとして、
    これに税率をかけると、B子さんは、1,900万円×15%で285万円となり、
    C介さんもおなじく 1,900万円×15%で285万円となります。
     
    ここから税額控除の50万円を引くと、B子さんが納める相続税は、235万円で、
    C介さんが納める相続額も、235万円となります。

※ちなみに、平成27年までの旧法だとそれぞれが負担する相続税は50万円でした。
いかに負担増となったかがわかりますね。

4.相続税の納付

相続税は、相続人または受遺者が相続または遺贈により取得した財産を課税の対象としていることから、金銭で一時に納付することが困難な場合があります。

したがって、相続税の納税方法は、次のようになっています。

1

金銭一括納付

相続税の納期限までに相続税を金銭で納付することです。

※相続税申告書の提出期限後に納めた場合、別に延滞税(提出期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年7.3%、その後は年14.6%の割合)が課されます。

2

延納

一定の期間に相続税を分割して金銭納付することです。

※別に利子税が課税されます

3

物納

相続税を金銭以外の相続財産で納付することです。

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5.延納ができる場合

次の要件をすべて満たす場合は、金銭一括納付に代えて延納を選択することができます。

1 申告(更正または決定)による相続税額が、10万円を超えること。
2 納期限(納付すべき日)までに金銭で一括納付することが困難であること。
3 担保を提供すること。
4

相続税の納期限(納付すべき日)までに延納申請書を提出すること。

税務署長の許可(変更した条件による許可を含む)を要する

  • 相続税額がいくらであっても延納を選択できるというわけではありません。
  • 担保の種類(これらの物を担保として入れる必要があります。)
    国債および地方債
    社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
    土地
    建物、立木、船舶等で保険に付したもの
    鉄道財団、工場財団、鉱業財団等
    税務署長が確実と認める保証人の保証

6.物納ができる場合

次の要件をすべて満たすべきは、金銭納付に代えて物納を選択することができます。

1 相続税を延納によっても金銭で納付することが困難な事由があること。
2 金銭で納付することが困難である金額の限度内であること。
3 相続税の納期限(納付すべき日)までに物納申請書を提出すること。
4

物納できる相続財産であること。

金銭納付困難の事由の判断は、近い将来における相続人の収入および支出も考慮されます。税務署長の許可(変更した条件による許可を含む)を要する

7.物納ができる財産

    物納財産の順序
1 国債・地方債 第1順位
2 不動産・船舶 第1順位
3 社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券 第2順位
4 動産 第3順位

8.物納財産の収納価額

1

原則として、課税価格の計算の基礎となったその財産の価額です。

つまり、相続税の申告に際しての評価額です。

  1. 貸家や貸家建付地を物納する際の収納価額は、貸家や貸家建付地の評価減後の価額です。貸宅地や借地権も同様です。
  2. 小規模宅地等の評価減を受けた宅地等を物納する際の収納価額は、評価減後の価額です。
2 収納時までに著しい状況変化のあったときは、収納時の現況により税務署長が定めた価額です。

9.物納が認められない財産(管理処分不適当な財産)

1

共有事項

  1. 質権、抵当権その他の担保権の目的になっている財産
  2. 係争中の財産
  3. 共有財産(ただし、共有者全員が特分の全部を物納する場合を除く)
  4. 譲渡に関して法令に特別の定めのある財産
2

有価証券

  1. 収納時において利払期の到来していない利札が切り取られている国債、地方債または社積
  2. 譲渡に関して定款に制限がある株式または出資証券
  3. 売却できる見込みのない有価証券
3

不動産

  1. 買戻しの特約の登記、所有権移転の仮登記等のある不動産
  2. 売却できる見込みのない不動産
  3. 稼動工場の一部を構成する不動産等のように、ほかの財産と一体として効用を有する不動産
  4. 現状を維持するための土留、護岸等の築造またはその修理を要する土地
  5. 境界線が明確でない土地で、隣地地主から境界線に異議のない旨の了解が得られない土地
  6. 現に公共の用に供されているまたは供されることが見込まれる土地または建物
  7. 入会慣習のある土地
  8. 今後数年以内の使用に耐えないと認められる建物
  9. 維持又は管理に特殊な技能を要する劇場、工場、浴場その他の大建築物
  10. 土地の所有権の伴わない立木(ただし「立木ニ関スル法律」の規定により登記している立木は除かれる)
  11. 借地、借家契約の円滑な継続が困難な不動産
4

動産

  1. 総トン数20トン未満の船舶で、納税者が管理することを承諾しないもの
  2. 今後数年以内の使用に耐えないと認められる船舶または機械
  3. 国において管理することが困難なもので、納税者が管理することを承諾しないもの

2. 相続税に関するFAQ

Q1. 相続税とは何ですか?

A. 相続税は、亡くなった人の財産を相続や遺贈によって取得した人が、その取得額に応じて納める税金です。課税の対象は、預貯金・不動産・株式などのプラス財産から、借金などのマイナス財産を差し引いた「正味の遺産額」となります。


Q2. 相続税は誰が払うのですか?

A. 財産を取得した相続人や受遺者(遺言で財産を受け取った人)が、それぞれ取得した財産に応じて税額を算出し、個別に納税します。相続人ごとに計算・申告・納付するのが原則です。


Q3. 相続税には基礎控除がありますか?

A. はい。相続税には次のような基礎控除があり、これを超える遺産に対して課税されます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除は4,800万円になります。


Q4. 相続税の税率はどのくらいですか?

A. 相続税は累進課税制度で、取得金額が大きいほど税率も上がります。以下は一部抜粋です(※課税価格に対する税率)

課税取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
3億円超 55% 7,200万円

※実際の税額は、法定相続分に応じた課税価格を基準に算出後、各人の取得割合で調整します。


Q5. 相続税の申告期限はいつまでですか?

A. 相続の開始(=被相続人の死亡)を知った日から10か月以内に、所轄の税務署に申告・納付が必要です。この期限を過ぎると延滞税や加算税が発生する場合があります。


Q6. お金がすぐに用意できない場合、相続税の納付はどうなりますか?

A. 納税が困難な場合には、延納(分割払い)や物納(不動産などでの納付)の制度を利用できます。ただし、いずれも申請が必要で、税務署による審査があります。


Q7. 延納とは何ですか?

A. 延納とは、一定の利子税を支払うことで相続税を最長20年まで分割払いできる制度です。原則として担保の提供が必要で、支払能力や財産内容の審査があります。延納の申請は相続税の申告と同時に行う必要があります。


Q8. 物納とは何ですか?

A. 物納は、金銭での納付が著しく困難な場合に、不動産・有価証券などの財産で納める方法です。ただし、物納できる財産には順位があり、国にとって受け入れ可能なものでなければなりません。延納の適用が優先されるため、物納は最終手段です。


Q9. 配偶者はどれだけ財産を相続しても課税されないって本当ですか?

A. はい。配偶者には「配偶者の税額軽減」という制度があり、1億6,000万円または法定相続分相当額まで非課税となります。申告は必要ですが、税金がかからないケースが多く見られます。


Q10. 相続税の対策や納税方法について相談できますか?

A. もちろんです。相続税の申告は税理士の分野ですが、よこやま行政書士事務所では、相続財産の評価補助、遺産分割協議書の作成支援、税理士との連携による相続対策のアドバイスなど、実務面をトータルでサポートしております。申告期限内の対応が重要ですので、早めのご相談をおすすめします。